古民家をリノベーションして飲食店やレストラン、宿泊施設(民泊)として活用する古民家の需要が全国で急増している。
古民家は、建築後50年以上経過した、クギを使わないなど伝統的な木造建築工法でつくられた住居を指す。こうした古民家が今ビジネスとして全国で動き始めている。
古民家の紹介で全国トップクラスという「田舎暮らし!千葉房総ねっと(株)」(千葉県長生郡)の武田新・取締役は、古民家需要は増える一方だと語る。
「首都圏の方だけでなく、海外のお客さんからも問い合わせや紹介が急増しています。古民家をリノベーションして喫茶店やレストラン、民泊をやりたいという方、移住したいという方も多いですね」
さらに最近の傾向として、購入後にユーチューブでセルフビルドを学び、リノベーションした物件を動画で公開する古民家ユーチューバーも増えてきているという。
兵庫県では全国の自治体に先駆けて2007年から「古民家再生促進支援事業」を実施している。同県まちづくり部・中尾元主幹は、県内には優良な古民家が数多く存在するが、その価値が認識されないまま解体されていくケースが多くなっていると指摘する。そのため既存ストックの有効活用、伝統的木造建築技術や街並み景観の維持・継承を目的として地域の大工・建築士などと共に古民家再生の支援を行っているという。
2022年度まで古民家所有者の申請で専門家を派遣した建物調査は371件。調査結果から支援の対象となり改修工事に入り再生した古民家は40件。1500万円以上改修工事費がかかる物件には、補助金500万円の支援がある。
中尾主幹は、古民家を使った民泊が人気で、古民家の再生で雇用が生まれ、人口増にもつながると指摘する。観光客が周辺地域に足を延ばすことで周辺消費も拡大し、地域の経済活性化に大いに役立っていると語る。
日本政策投資銀行が行った「古民家の活用に伴う経済的価値創出がもたらす地域活性化」のリポート(2015年)では、古民家を活用することで修繕、リフォームなどに際しての潜在的な市場規模は約1.8兆円と試算する。
昨年9月のコロナ水際対策の緩和によるインバウンド回復で、訪日客の人気を集めているのが古民家を活用した民泊だ。民泊仲介大手のAirbnb(エアビーアンドビー)の松尾崇・広報部長は、リピートの外国人観光客が増えており、皆さんもはや原宿、渋谷、浅草ではなくて、地方の日本的なたたずまいの古民家での民泊を好まれ、長期滞在されていると語る。その地域の方々との交流で日本の文化や歴史、伝統を直接体験することで地元のコミュニティーと親しくなり、地域にとっては活性化にもつながっていると語る。